トいるんだから、話を急ぐんでねえ。要するに、買手は誰でもかまわない。百円が五十円でも高い方に売ろうと言うわけでね、もうこれ以上くどい話を伺っても無駄ですよ。
林 いや横田さん、お忙しいところをお手間をとらせてすみませんが、さっきも申し上げたように、そのパリで亡くなられた黒田先生とはカラマツの事で懇意にしていただきましてな。わしは郵便局をやっていながらズーッとカラマツの養殖については骨を折ってきてる人間でしてな、で、この柳沢金吾君はその黒田さんから畑や山林の管理をまかされて一生懸命でやってきた男で、この度、どういう御事情かわからないが、それが売りに出されて、他人の手に渡ると黒田先生に申しわけが無し、自分も身を切られるように辛い、と、私に泣きついてきたんで、まあ、わたしもこうして一緒につれそって来たようなわけでやして、どうかひとつ――
横田 林さん、そんな事を何度言われても、もう仕方がありません。海の口の轟という地主が別荘、山林、畑すっかりで六、〇〇〇円で買おうと値をつけているんだから、この柳沢君か、この人が三千や四千の金を並べてくれても、考える余地が無いわけでしてな。せめて同額の六千円出
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