「で[#「帰らないで」は底本では「帰らなで」]、こゝで暮そうかしら?
金吾 そうでやすねえ。……ちょっと、この草んとこにお掛けやしたら。
春子 ……ありがとう。(かける)
金吾 ……御主人はなかなかおいでにならねえようで――?
春子 敏行? そうね、直ぐ追いかけて来るような事も言ってたけど、なにしろ、気の変りやすい人で。それに、フランスから帰ってから、セメント山の事業に手を出して、忙しがっているの。
金吾 セメント山でやすか。
春子 いえ、山と言っても極く小さい所らしいけど、それでもお金が随分かかるらしいのね。株式とかにするそうだけど、でも社長になるためには、金を集めなきゃならないとかでね、夢中なの。
金吾 だけんど、お一人じゃ御不自由でがしょうに?
春子 え? ああ敏行? ううん、私なぞ居ない方がかえってノウノウと飛びまわれて、いいんでしょ。
金吾 ……香川さんとおっしゃった方あ、その後お元気で[#「お元気で」は底本では「お先気で」]やしょうか?
春子 賢一さんね、ブラジルでコーヒー園をやっていらっしゃるそうだけど、私の方へはちっともお便りないの。敦子さんの方へは、たまあにハガキなど
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