ナ、根は刈りとっちまったが、まだ幹には養分があってな、それをさかさにしてこうやってかけておくと、まだこれからだって稲の粒は大きくなるだ。
金太 あのな、お父ちゃん……開拓農場の方じゃ、トラクターをまた一台入れたよ。この間なんぞ、駅前の雑木林をひっくりかえしてたらトラクターがデングリ返ってな、そこら中はねくり廻ってあばれたよ、あははは。
金吾 あははは、まあまあ怪我人がでねえようにするこった。
金太 春子おばさんが、あのトラクターの音ば、えらく恐がってね。この間も、遠くの方であれがしはじめたら、俺と二人で蝶々つかまえてたのが、いきなり駈け出して逃げたっけ。
金吾 そうか。病気のせいで頭あ馬鹿になっちゃってるんだから……
金太 うん、まるで、へえ、ちっちゃい子みてえだ。今、なにしてるかなあ。
金吾 ははは、きんにょ[#「きんにょ」に傍点]から、東京から敦子さまがみえて下すってるし、そこへ今朝っから海尻からお仙ちゃんが遊びにきてくれるし、ご機嫌だらず。俺だちも、ここ終えたら今日は早く引上げて別荘の方へ行くべ。
金太 敦子さんのおばさんもいい人だなあ。きんにょ、別荘についたらな、罐詰だとか、そいからお菓子なんずを、俺と春子おばさんに次から次とあけてくれてな、そしたら春子おばさんが出されるものを、はじから食べちまって、しまいに食べこぼしたら、敦子おばさんがとても叱ったぞ。したらな春子おばさんがメソメソ泣き出して詫まるんだ。したら、敦子おばさんがかんべんしてやったら、春子おばさん、すぐにニコニコして、とても甘ったれてな。おばさん達は、あれは親戚かい?
金吾 (何か胸を打たれて、ちょっと黙って)……ううん、親戚だねえが、小せえ時からの仲よしでな、ははは。ちょうど海尻の金太のおっかあやお父うと[#「お父うと」は底本では「の父うと」]俺の仲のようなもんだ。

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遠くで山鳩の声。それにまじって、林の奥から、はしゃいで駈け廻りながらこちらへ近づく犬の吠声。
[#ここで字下げ終わり]

金太 ああ、ジョンが来たよ。どうしたんかな?
金吾 うむ……
金太 ああ、敦子さんのおばさんがこっちへやって来た。
敦子 (林の小道をこちらへ近づいて来ながら)ああ、ここにいたのね。金太郎さんも加勢?
金吾 こりゃ敦子さま、ここを終えたら俺たちも別荘の方へ行ってみずと思っていやしたが…
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