ていたからか

川岸にクマ笹がなくなつて
灌木の林が
ピシピシと音をたてる

その次に思い出したのが
畠山
國本
織田
三人とも友人だつた
畠山よ 君は相變らず澁い顏をして
俺は甘くないぞという顏をして
それ故にこの上もなく甘い顏をして
[#ここから2字下げ]
「小野田がなんだよ!」
[#ここで字下げ終わり]
と言つて嘲笑した
君の嘲笑は
シンからの憎惡を含んでいる
君が小野田を嫉妬している嫉妬心はほんものだからだ
小野田は君と同年なのに
すでに花形小説家で
君はまだ世に出ざる小説家で
小野田は君を同輩として
重んじるような形でかろんじ
君は君で小野田を
呼びすてにしたりすることで
オベッカをして
そして互いに暗闇の中のマムシのように
憎み合つている
俺は君がそれほど嫉妬する
小野田という流行作家とは
どんな人間だろうと思つて
いくらか興味を持つていた
それが君に紹介されて
會つてみると
それは人間ではなくて豚だ
からだも心もグナグナで
なにかというとすぐに悲鳴をあげ
體中の粘液が多過ぎて
自分で自分の粘液をなめては醉いしれて
ヒョロヒョロになつて歩いている
豚…………

次に人生の被
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