つてよ
もつて行く所がねえから
しの屋へ持つていつたらば
しの屋のばあさまがな
馬の子ならば賣れるからええが
人間の子供なんぞ拾つてきやがつて
ものを食うからおいねえ
さんざん怒つてな
捨吉という名をつけた
ハハハハ…………」
[#ここで字下げ終わり]
少女のような聲をあげて
輕く笑つた
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「平太郎さが
まながしの馬市へ子馬買いに行つただい
まながしで酒くらつてな
醉つぱらうと氣がでかくならあ
子馬の金でばくちうつてよ
金をすつかりとられたげな
そんで歸りに
まながしの町はずれまで來たら
馬のクソのわきに
おらが捨ててあつてよ
ほつとけば
馬にふんずけられるから
しかたなく拾つて歸つた」
[#ここで字下げ終わり]
スタスタと歩きながら
ポツリと一こと言い
また一丁行つて
ポツリと一こと言う
[#ここから2字下げ]
「學校へは行かないのか?」
「學校なんず行かねえ
しの屋のばあさまはけちんぼでよ
食うものもちつとしかくれねえ
お客が泊つて食い殘しがあると
魚だの肉だのくれらあ」
「どんな人が泊るんだ?」
「この奧のダムの石屋だとか
農林小屋の人もたまに泊らあ
小父さ
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