どい臭いをさせなくても
肥料のかげんは調べられるさ
そうじゃないさ、おやじは
小父さんの木魚の音がすると
ムカムカとガマンができなくなるんだ
あんだけほかのことでは静かな人間が
どうしてあんなに気ちがいじみてしまうんだろ?」
「ホントにそうよ
内のお父さんだって、ほかのことでは
そんなにわからない人では無いのよ
それがお宅のこととなると
どうしてあんなに直ぐにカッとなるんでしょ?
オトナはみんな頭がおかしいんじゃないかしら?」
「そうだね、とにかく馬鹿だ、みんな」
昇さんがそう言った時に廊下に足音がして
「なにが馬鹿だね?」と言いながら
私の父がふすまを開けて入って来ました
声の調子は機嫌良さそうに作っていますが
腹を立てているのは
額口に青筋を立てているのでわかります
「今日は。小父さんお早うございます」
「お早う。いつも光子のお見舞いで、すまんね」
「お父さん、この花、いただいたのよ」
「そうかね、それはどうも――」
と言ったきり、私の膝の上のダリヤを父はギロギロと睨んでいます
「じゃ僕は市場へ行くから、これで――」
「お父さん、それから、この本も昇さんがわざわざ買って来てくだすっ
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