めったに痛まないけど
時々ズキズキする朝があっても
あの木魚の音とお父さんのお経を聞いていると
痛みが少しづつ薄らいで行くのです
ポクポク、ポクポク!
2
それはそうと、もうソロソロ八時だから
竹藪の小みちを通って
昇さんがここに来る頃です
昇さんはうちのお隣りの
花を育てる農園の一人息子です
私より二つ年上だから今十九で
私とは小さい時からの仲良しで
昼間はお父さんの手伝いで
温室の手入れや市場への切り花の荷出しで働きながら
夜間の学校に通っている
昇さんは毎朝のようにお父さんにかくれて
温室の裏をまわって
垣根の[#「垣根の」は底本では「恒根の」]穴をソッと抜け
竹やぶの径を小走りに
私のところに来てくれます
「光ちゃんよ、お早う!」
「昇さん、お早う!」
「元気かよ? 昨日の午後の熱はどうだった? 今朝はあるの? 痛むかい?」
「今朝は平熱で、それほど痛まない。昨日の午後は七度一分で大したことないの」
「そら、よかった。はい、花だ」
「まあ、きれい! ありがとう昇さん
もう春の花が咲くのね」
「今、父さんが市場へ持って行くのを自転車に積んでるんで
そっと一本もって来
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