いや、その後、その野村の旦那から
金や貸借のカタに受取ったものだと隣りでは言う
隣りの内の先代というのが
鶏の蹴合いバクチの好きな男で
ホントのバクチも打ったらしい
そこへ野村という大地主がやっぱり闘鶏にこっていたから
もしかすると勝負の賭けにあの林をかけて
隣りの先代に取られたのかもしれないがね
しかし証拠もなんにも無い話だし
野村の旦那もとうの昔に亡くなっていて
誰に聞こうにも聞く人もない
とにかく久しく当山の土地であったものを
そんなアヤフヤなことで隣りに渡すわけには行かないとことわると
さあ隣りの先代がジャジャばるわ、ジャジャばるわ
嫌がらせやら、おどかしやら、果ては墓地に入りこんで乱暴をする
どうでバクチでも打とうと言うあばれ者のことで
することがむちゃくちゃだ
当山の住職も、最初のうちは、たかが荒れ地の十坪あまりのことだ
次第によっては黙って隣りに進呈してもよいと思われたそうだが
しかし隣りのやりくちがあんまりアコギが過ぎるので
そんなことならこちらもおとなしく引っ込んではいられないと
いち時は檀家の者まで騒ぎ出して
えらい争いになったそうだ
その後、裁判沙汰にまでなっ
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