立ちますよ
そいで御院主さんは立ちあがって垣根から
隣りの畑を見てござらしただけですよ!」
「君のお父さんの形相があんまり凄いので
内の母は、これは今にも垣根を破り越えて来て
親父に斬りかかるのかと思ったそうだ
母はあの通り気が小さくて臆病だし
君のお父さんと内の父との不仲では
永い間、苦にやんで苦にやんで
夢の中でうなされるまでになっているのだから
トッサのうちにそう思うのも無理がないんだ
それでハッとして鍬を持ったまま
父の所へ走って行って目顔でそれを知らせると
今度は父も血相を変えて垣根の方を睨んでいたが
すぐに母から鍬を取って
君のお父さんの方へドシドシと歩いて行って
垣根の前に立ちはだかって
鍬を構えた両手をブルブルふるわせる
君のお父さんの顔は真青で
僕の父の顔は反対に真赤になって
それが鼻と鼻とを突き合わさんばかりに、なんにも言わないで
互いに相手を咒い殺すような目つきをして
睨み合って立っていた!
ちょうどそこへ僕が帰って来たんだよ
僕には何のことやらわからんし
ただ両方のケンマクだけは物凄いので
びっくりして立って見ていたんだ
そしたら、さすがにお花婆さんもドギモを抜
前へ 次へ
全34ページ中13ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング