き出すんでなけりゃ、一行も書けん。あわを食って、時代の調子に自分を合せようとすることなぞ、どうしても出来ん……。
浦上 いや、そんな事よりも、つまりだな、人民戦線風の考え方では、もう既に時勢のホントのいぶきは掴めない事は事実ですね。
三好 人民戦線? 僕が人民戦線だって? (眼をむいて驚いている)
浦上 いや、あなたがそうだって言うんじゃありませんよ。ただ世間にはいろんな事を言う人が有りましてねえ――。
三好 世間はどうでもいいんだ。あなたの考えを聞いているんだ。
浦上 そんな風に言われたって――。
三好 いや、知りたいんだ。良し悪しに関せず、自分の心得のために。……すると、僕の今度の作品にも、そういう所が有りますか?
浦上 ……いえ、まあ、そんな風に見る向きも有るって事を言っているんですよ。
三好 だから、どこが、どんな風に? 又、どこそこと言うんで無しに、全体が、そんな風な気分で貫かれていると[#「いると」は底本では「ゐると」]言うんですか? 遠慮無く言って下さい。
浦上 別に、それほどハッキリした事じゃ無いんですよ。
三好 しかし、すると、誰が、あなたにそう言いました?
浦上 困
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