も、言って見りゃ、明日の日がわからん。金はもう、此の二月ばかり無いしね。よく生きてると思う。
轟 だって堀井さんの方から、いくらか――?
三好 先生の方は僕よりゃ[#「僕よりゃ」は底本では「僕よりや」]、ひどいさ。……先ずお袖さんの才覚や、登美君の金で食わして貰ってるんだなあ。ハハハ、痩せる筈さ。もっとも、チョット心当りが無い事は無いから、それがどうにかなったら、少しは君の方へも廻せる。
轟 いや、こんだけ厄介になっているのに、その上そんな……実際、頭がカーッとして叫び出しそうになる事があるんだ。……おふくろだって、黙ってはいるが、やっぱりそうだと見えて、夜中にうなされたりしているんですよ。先日もヒョッと眼が覚めて見ると、おふくろが寝床の上に起き上って、ボンヤリ指を折って何か言っているんだ。よく聞くと、「一俵二俵三俵……」と言っている。昔、田舎で盛大にやっていた時分の、小作米の勘定をしているんだな。……人間の妄想と言うか……現在一升の米にも困っている病人が、よる夜中、床の上に起きて米俵の勘定をしてる。……僕あゾーッとしちゃってねえ。
三好 ふーむ。……
轟 ……なるほど僕は、あせってい
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