好さん、なけなしの金を、ああしてあなたにあげたわね。
佐田 僕あ、感謝していますよ。…………(しばらく黙っていてから)あなたは三好さんの、なんですか、愛人ですか?
登美 あいじん?……私?
佐田 そうでしょう?
登美 そう見える?……フ。
佐田 そうじゃないんですか?
登美 なぜそんな事おききになるの?
佐田 ……なぜって事も無いんですが、……はじめから、僕は、あなたを綺麗な人だと思っているから。
登美 ……。綺麗でしょう? 勿論綺麗だわ、私は。
佐田 ……あなたを見ていると、僕あ、なんか、夢の中で美しい人を見ている様な気になる。
登美 夢ね? アハハ。
佐田 嘘を、僕は言ってるんじゃ無いんだ。(スッと立って来て、登美の直ぐ傍に並んで坐る)
登美 …………? (でも起とうとはしない)
佐田 (机にかけた自分の左手を見て)チョット、これを、おさえて下さい。こんなに顫えるんだ。こいだけ、もう、身体が参っちゃってるんですよ。……おさえて見て下さい。
登美 こうなの?……(佐田の左手を片手でおさえる)
佐田 ……こら。ドキドキしているでしょう?
登美 そうね。……(少し身じろぎをして)なに、なさるの?
佐田 いや、僕はね……。
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(二人はそのままの姿で並んだままジッとしていたが、登美がそれまで右手に握っていた金属の編棒を、着物の上から佐田の脚のどこかにグッと突き立てて、次第に力を加えて行く。佐田は、その痛みをジッとこらえている。声は出さないが、よほど痛いと見えて、肩で息をしている。……そこへ、足音が下手奥の廊下からして来る。登美が編棒を引く。佐田ヨロリと立って、元の所へ戻って坐り、前へ折れ曲るようにして畳を見ている。三好入って来る)
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三好 ……勝手にしろ。(一人ごと)
登美 どうしたの?
三好 ジュンデンゴウと言う奴か。(坐る)
登美 どうして?
三好 うん、向うでなんか談判している。……(佐田を見る。見ていて、何か思い決した風で奥歯をグッと噛み、眼を光らせて立ちあがり、床の間の方へ行って、そこにのせてあった一束の原稿を持って戻って来、佐田の前にそれを置く)……これが君の作品だ。
佐田 はあ……。
三好 言うよ。仕方が無い。……言うからには正直に言う。ことわって置くが、勿論これは僕の一家言だ。つまり偏見だよ。自分では自分の言う
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