山と言う人が伺った筈でございますが――韮山正直と言って――。
登美 韮山さんなら、見えています。
本田 いる、と言うと――今、来ているんですか?
登美 はあ。朝からズーッと。
本田 そりゃ――そいつは――(言うなり、サッと縁側にあがり、キョロキョロと四辺を見廻す)じゃ、チョット失礼して――(あわてた風で座敷の方へ入って行きそうにする)
三好 ……(突立ったまま本田をジロジロ見ていたが)そっちじゃありませんよ。
本田 え? どこです?
三好 応接室です。そう申して来ましょうか?
本田 (あわてて)いや! いいんです! 私が行きますから。ええと応接室と言うのは――。
三好 こっちです。御案内しましょう。(先きに立って下手へ歩き出す)
本田 そりゃ、どうも――(キョロキョロと彼方此方を警戒しながら、三好の背後にピッタリと引き添うようにして、ついて行く。三好は、下手の室に入り、その奥の襖をサッと開ける。すると、本田は何と思ったか、三好より先きに、サッとそこから奥の廊下に消える。三好は驚いて、それを見ていたが、やがてこれも、奥へ去る)
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(登美はその二人の姿を見送って立っていたが、やがてスタスタ、元の室の机の所に戻って来て坐る)
[#ここで字下げ終わり]
佐田 ……なんですかね?
登美 さあ。……変なお客ばっかり、しょっちゅう来る家ですから――。(レース編物を取り上げる)
佐田 ……さしずめ[#「さしずめ」は底本では「さしづめ」]、僕なんぞは、変なのの一人ですかね。ハハ。
登美 ……(顔をあげて佐田を見るが、話に乗って行こうとせず、又うつむいて編物をはじめる)
佐田 何を編むんですか?
登美 ええ……。
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(話のつぎほが無い。上手奥の離れた所から、お袖の掻《か》き鳴す三味線の音がして来る。これは最後まで断続する。……佐田、眼を据えて登美の姿を見ている。……間。……登美は佐田から見詰められている事を意識して不愉快らしいが、動かぬ。すまして、編物の手を動かしている)
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佐田 むむ……。(低く唸るような声)
登美 ……どうなすって?
佐田 いや……。登美子さん――。
登美 あなた、三好さんをいじめるの、いいかげんになすったら、どう?
佐田 いじめやしません。なんしろ僕あ苦しいもんだから――。
登美 この前だって、三
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