事に間違いは無いと思うが、でも他の人が見れば、又違った見方をするだろう。批評と言うものは、そんなものだ。結局、なんのたしにもなるもんじゃ無い。いいね?
佐田 ……(黙ってかがみ込んでいる)
三好 ……そいで、ハッキリ言うと、君は一日も早く戯曲なぞ書くのを、よした方がいい。望みは無い! (言い切って、真青な顔をしている)
佐田 ……(首を垂れていたが、やがてフト顔を上げて)駄目でしょうか?
三好 駄目だ。……全体、命がけで戯曲を書いている人の、こいつは、作品では無い。命がけで書いた作品を、第一、こうして、綴じても来ないと言う法があるか。
佐田 ……それはあなたが僕の生活を知らないからです。綴じようにも、紐一本、紙一枚僕は持っていません。原稿紙だけはズッと以前のがありましたけど。
三好 ……いや。内容もそうだよ。ここに出て来る若い男が女に話す話、まあラブシーンかね、……あれは、なんだ? 田舎の百姓の青年が、「僕はこうしてあなたと並んでいると、生命の躍動を感じます」とは、なんてえ言い草だ? ダボラを吹くな! これはホンの一例だよ。徹頭徹尾、君は作品で嘘をつこうとしているんだ。
佐田 そうでしょうか? 僕は、現実に行われる会話や動作を、作品でそのまますき写しをして再現することは、必らずしも要らないと思っているんですけど――。
三好 僕の言っているのは、その事じゃ無い。……なるほど、現実をすき写しをする必要は無い。しかしどんなにロマンティックな、又は表現的な書き現わし方をしようと、そいつの根本は正直でなきゃならん。リアリティがどうのこうのと、理窟を僕は言おうとしているんじゃ無い。ごく普通の意味で正直。それだ。そいつを、君は、ごまかそうとしている。飾り立てようとしている。
佐田 しかし、僕の生活なぞ飾り立てでもしなければ、あまりにみじめですからねえ。
三好 駄目だよ。君の生活の、どこが結局みじめだよ? むしろ、みじめなのは、飾り立てでもしなければ、あまりにみじめだと思っている君の精神そのものだ。創作をする事が、なにかしら、すばらしい聖なる仕事のように考えて、それにかじり附いて、そんな愚劣なものを書いて自己満足を感じている君の量見が、一番みじめだよ。悪い事は言わないから、そんな物を書きちらす事なぞよして、何でもいい、どんな小さな仕事でもいいから、もっと有用な仕事を捜すんだな。
佐
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