あんた甚次の伯父かね?
六平 しかしまあ、伯父見たいなもの。左様、あれの死んだ母親の叔母が内の大伯母のいとこだ。私あ伯父として当時から、これは仕向け方一つで物になると――。
笠太 お言葉中でがすが、あんたが伯父なれば、此の私あ、あんかね?
六平 あん?(話の腰を折られて、急に口をつぐみ、見上げ見下して相手を睨みつける)ふうーん。(二人は毒々しい程の眼付で睨み合ふ。その間も六郎が寝こけてゐるのは勿論のこと、クミの方も、父と六平太のこんな争ひは何度も聞いて飽きてゐると見えて先刻からコクリコクリと居眠つてゐる)(短い間)
六平 私が伯父であれば、お前、御迷惑〈で〉がすかい?
笠太 ……私が伯父であれば、あんたさん、お気に召さん向きがお有りかいや?(両人の言葉が丁寧になつたのは、それだけ感情が険悪になつた証拠なのである――間)
六平 ……ハハ。私あ区長やつとんぢやから、区から成功者が出れば、名誉じやから歓迎もする訳合いでのう。
笠太 全くでがす。(と殆んど呪ひを込めて言ひ放つて)私あ、血こそつながつて居らんけどもが、伯父ぢやから、とにかく伯父ぢやから、伯父としてあやつをもてなさんならんと思うと
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