け待つて来ねえのぢやから、何か差しつかえが出来たのぢやろ。
六平 お前も帰るかなあ?
笠太 私あ、ついでだ、もう少し待つて見つからね。あんたあお先い帰つてくれろ。金え使はしたりして気の毒だあ。
六平 お前が待つて居るなれば、私も待つた居べよ。ああに、太田屋で一二杯飲む分にや、知れたもんだ。やれ、どつこいしよ。六郎め、よくねぶつてけつから。ああ、酔うたわ。(笠太郎は、さう云ふ六平太を憎さげにチロチロ睨んで、ヂレてゐる)うーい。ああ、本年も、もう秋だのう。こら六郎、もうチツトそつちへ寄らんか。いやあ、甚次公も、えらい骨を折らせる男よ。早いとこスパツと帰つて来ねえかのう。丸二日ぢやからねえ、こいつは二日分の手間代だけはおごらせんならんなあ。ハハハ。束京へ出ると、苦学をして、夜の実業学校ば卒業したと云ふなあ。そいで、その銀行につとめてさ、初めは、どうせペイペイぢや、そこがそれトントントンと段々にのう。ハハ。そもそも甚次君と云ふ青年は、以前からして、ほかの子供とは少し違うて居た。私は伯父として、当時から――(とベラベラと埓もなく喋りまくる)
笠太 (さえ切《ぎ》つて)お言葉中でがすが、区長さん、
前へ
次へ
全37ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング