井へ行きますよ。
洋服 五時半はもう過ぎとる。どうも時間が不確かでいかん。此処で待つて居ればええかね?
トヨ 五時の妻恋行は、お客が一人もなければ、行かねえ事も有つから、行くんなら下の車庫ささう言つとかんと、いきませんが。
洋服 そら、いかん。そら、いかん!(と左手へソソクサ行きかける)
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(そこへアワを食つて左手から走り出て来る六平太、笠太郎、クミ、六郎の四人。洋服の男とバツタリ出くわす)
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六平 (息を切りながら、相手を見上げ見下し)はあ、すると云ふと……はあ、これだ、これだ! 早道をしたで行違いになりをつた!
笠太 こ、こ、こりや! こりや立派になつたのう、甚次! 面突き合しても、こいでは甚次たあ解らんわえ! ほう! 立派になつた、立派になつた! 甚次よ!
六平 (負けないで)はあ、立派なものだ! 出世したもんよのう! 甚次君、六平太の小父だやう! どうだい、辺見甚次君だ! 万才々々!
六郎 バンザーイ。バンザーイ。
笠太 甚次よ、あにをボンヤリして居る。伯父の笠太郎ぢやが! よかつた、よかつた、私あ、私あ、なんぼう嬉しいか解らんぞよ
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