。こら、クミ、来い! あにを羞かしがつてゐるや! それ、これがその甚次だ! ハハハハ、甚次よ、これがクミぢや。見てやつちくれ。ハハハ。
六平 いやあ妻恋の名誉の段では――。
笠太 辺見一家でこれ程の出世ば――。
洋服 (すがり付いて来る手を振りほどいて、後ずさりして、呆れて見廻してから)……何がどうしたでが? さうガヤガヤと――。
笠太 はあ、俺あ嬉しくつて嬉しくつて、お前を迎へるのに昨日から此処に立つて待つてゐたわな。ハハハ、いやあ、大したもんよ!
六平 大出世だあ! 私も昨日からズツと歓迎しようと思うての、ハハ。
洋服 私を歓迎――?
[#ここから2字下げ]
(トタンに右手から前出の高井のオヤヂが、又酒を飲んだと見えて、殆んど泥酔に近い状態で、鎌を振り廻しながら走り出して来る)
[#ここで字下げ終わり]
オヤ (わめく)検査官が、あんでえつ! 畜生! 人の怨みが有るものか無えものか! バラしてやつから、出て来いつ! 出せつ! どこさ逃げあがつたつ! 自分の手で自分のクズ米で、ドブロク拵えるのが、あにが悪いかつ!(といきなりクミの肩を掴む)
クミ キヤア!
オヤ キヤアたあ、あんだつ
前へ
次へ
全37ページ中29ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング