……。
トヨ 自分の事ばかり喋くつてゐたが、あんた様、紙芝居とやらで――。
紙芝 ハハ、いやどうも。自分で自分の気が知れないんだ。商売なんかぢやない。ウロウロして歩くのに都合が好いから、やりはじめた。何をしていいかわからないんだ。……半年前までは、これでもチヤンとツトメを持つてゐたんです。そこをチヨイとした事、さう、知つた男に金を十円貸してやつた。軍需品工場の事務員だつたが、それが赤だつたと云ふのだ。なに私は直ぐ警察から戻されたが、社では否も応もない、首になる、女房が病気になる、此の子を生む、後直ぐ死んぢまふ。ボンヤリしてしまいましてね。悲しいと云ふんぢやない、八つ裂き、とまでは行くまいが、四つ裂き位にはなつたかね、まあ筋が抜けちまつた。もともとイクヂの無い男なんでしよう。そいで一度ヂツクリ、とまあ……そいでかうして居ますよ。ハハハハ、ムキになつて働いても、どうせどうにもなるもんか、と、まあね、ハハハハ。もつとも、此方で働く気でも、さうでなくても失業地獄の当世に、子持の上に、シンパ嫌疑で首と云ふケチの付いた男だもの、片つぱしから、相手にもなつてくれない。ハハハ、そいでとうだう、旅費も無
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