出たやうな気がします。村を出て行く今日と云ふ日ぢやけれ、どうか、こらえて下せえ、よ。
紙芝 なあに、そんな事あ……。だが、余計な事言ふ様だが、相手の、その父親に当る人の事を村の人達にも打開け、当人にもそう言つて、村に居て何とか身の立つ様にして貰つたら――
トヨ 向ふは物持の息子だし、どうせ嫁にする気は有りはせん。嫁取りの話がほかで進んでるやもの。このままで居れば俺の家も分散するばかりぢやけれ、持参金の財産目あてに、俺はいやでたまらんけれども篠の穀問屋の娘を取ることになつた、お前の事がバレると何もかもぶちこわしだで、どうか助けると思うて俺の事は世間へ云ふてくれるな……さう言ふて私を拝んで泣くのぢや。……拝まれたつて私あ元の身体にはなりはせぬ。……しかしこれを世間へ打ち開けてその男ば困らせて見たところで、元の身体にならぬは同じぢや。ハハハ、私には同じことだもの。ウンと言ふてしまうたでさ。ハハ。私あ小せえ時からのツムジ曲りだ、人の情にすがつて楽をするよりは、八つ裂きにされた方がましです。久保多へもその気で行くですわ。ハハハ。
紙芝 ……八つ裂きにね? ……えらいなあ。そこへ行くてえと私なざあ
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