でにやあかね?
紙芝 ……見たんですかい? ハハ、きまり悪いなあ。
女車掌 面白かつたで、おしまひまで見てしまうたよう。沓掛時次郎つうの好いわえ。(声色)太郎吉よ、もつともだ、俺も逢ひてえ、逢つて一言……あの辺好いわえなあ。
紙芝 ありがとうさん。まだ下手だ、私あ。
女車掌 これから又商売行くの?
紙芝 へえ、まあ……。
仇六 おい、乗せてくれるんかい? べつぴん、ホンマに乗せるか?
女車掌 あんだい、いやらしい、こん助平!(仇六の頬を平手で一つ喰はして、ドンドン左手へ行つてしまふ)
仇六[#「仇六」は底本では「仇七」] タツ! アハハハ。ワーンワーンワーン!(泣き真似。しかし涙を流してゐる)ワーン! 待て、この女郎め! 帰るから待ちなつ! ワーン(手を振り振り、左手へヨロヨロ小走りに、踊りの手附きで、唄ひつつ去る)マユ売る阿呆に、マユ売らん阿呆、同じ阿呆なら、飲まねや損ぢやい……。
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(後に残されたトヨに、紙芝居。暫く二人ともヂツとして身動きもしない。……やがて紙芝居ノツソリ立上つて振返つて見てから待合の中へ入つて行く)
[#ここで字下げ終わり]
紙芝 やあ、御
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