の始末にかからんと。
仇六 はあ、お前は笠太郎のオヤジでは無えか! どうだ、その甚次公の金持ちは戻つて来たのか? 戻つて来たら、うまくハメ込んで、借金やら二段田やら、いろいろ金え引張り出さうと云ふコンタンか知らねえが、さううまく行ぐかのう? どだ? うまく行つたら、銀行ば立てろ。な! そして抵当なしでドンドン金貸してくれ。頼むぜ。妻恋農工銀行ちうのだ、ええかつ! 妻恋農工銀行万才! 万才!(その間に、はじめビツクリした後、モヂモヂして皆を見廻してゐた紙芝居屋は、休息するために待合の方へ行きかける)
六平 仇六、お前、篠町から乗合で来たのか?
仇六 誰があ! 半額にまけろといくら掛合うても、まけくさらん。歩いて来たでさあ。此の人と、なあ(と男を目で捜して、歩きかけた男の肩を掴む)吹けよ、おい君!
紙芝 くたびれてゐるから。
笠太 甚次らしい若い男、篠町辺で見かけなんだか?
仇六 知らん。知るもんか。へん、笠太公、お前あんまり慾の皮突張らすのよしな。お前の待ちこがれて居るのは、甚次で無くて、甚次の金だろが?
笠太 阿呆つけ!
仇六 へん。そいで無かつたら、甚次が、――さうだ此の人であつても
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