、構はん理窟ぢや。なあ君、君は紙芝居であるけれどもが、君が辺見甚次君だろ、アハハハそんねな事、どうでもええわい、さ、ハーモニカ吹いちくれ! 吹けつ!(言はれた男は既に、待合は満員なのでその外の盛土の上に、グツタリと腰をおろしてゐる。弱つたなあと口の中で言つて仕方なくハーモニカを二吹三吹する)ア、コリヤサツト、マユがさがれば、百姓の目が釣り上る(デタラメに歌ひながら、ズツコケて来たマユ袋を頭から引つかぶつて踊り出す)こんな踊り見た事あんめ! マユ売る阿呆に、マユ売らん阿呆、同じ阿呆なら飲まなきや損ぢや。スツトコドツコイ、ドツコイシヨと!
クミ あれまあ、アハハハハハ! ハハハ!
女車掌 妻恋行きが発車しまあす!(と呼びながら、左手から出てくる。橋の上へ来て)妻恋行きにお乗りの方ありませんかあ? 妻恋行き、ありませんかあ? はれ、まあ!(と袋をかぶつて踊つてゐる姿を認めて、ノコノコ近付いて来て見てゐる)あれえ、こん爺さんだよう、篠町からこつち車の後さぶら下つちや、賃金半額にしろと云ひ通してとうどう乗らんかつた人!
仇六 あにをつ!(袋から顔を出して)よう、べつぴんさん! あにを、憎まれ口を
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