感嘆符疑問符、1−8−78]
六平 酒ば告発だなんて言つてるが、まさか検査官が来たんではあるめえな?
笠太 へーい! 検査官? すると――(眼の色を変へてゐる)
六平 今のは確か高井村のなわ手の小作だ。しかし、まさか――。
笠太 チヨツクラ、私訊ねて来て――。(右手へ行きかける。そこへ左手の方で自動車が着いた音とラツパ。それを聞くや六平太はその方へ行きかける。笠太郎はどつちへ行つたものかと右へ四五歩、左へ三四歩ウロウロ迷つた末、六平太の後を追うて走り出す。トタンに出しぬけに大きな声で仇六の歌声。六平太と笠太郎はビツクリして立止つてしまふ)
(酔つて歌ひながら、踊つて左手から出て来る仇六。左肩には、空になつたマユ袋をしばり付けテンビン棒をかついでゐるので、踊ると云つても右手を差上げたり、腰をグラグラさせるだけのものである)
仇六 はあーあ、踊る阿呆よ、踊らぬ阿呆、同じ阿呆なら踊らんと損ぢやい、と。トコドツコイ、ドツコイサ! 踊らんと損ぢやい。トコドツコイ。おい君、こら、吹きなよ、ハーモニカ吹かんかよ、おい君、紙芝居君!(後ろを振返つてわめく。見ると、みすぼらしい和服の三十歳位の男が、背に
前へ 次へ
全37ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング