前みたよなイタズラ娘が、甚次ば迎へに来ると言ふ法無あぞつ! 帰れ。うん、帰れ! 子供ん時は好え仲だとか、許婚だつたとか、そら、ホンマであつたとしてもだ、そりは、貴様の身性がマツトウであつてこそだ。何処の誰ともわからん者の子なんぞ産みやがつて――貴様そいでも、甚次の来るのば待つてゐて、あんとか又話ば――。
トヨ 笠太郎の小父さ。……私あ、迎へに来たんでない。篠町へ出て、汽車ん乗つて、久保多の町の方へ行きます。くたびれたで、休んで居るだけぢや。(これで笠太郎は口をふさがれて石の様に黙つてしまふ)
六平 ふーん、ぢや、久保多の三業の方に話が出来たと云ふはホンマかい?
トヨ ……へい。
六平 子供あ新家に置いてか?……んだがお前、三味線ひとつ引けめえに、三業と云うたところで、事は知れてら。気の毒――。
トヨ ……へい。……誰がしたんでも無あ、自分で自分ば売るんぢやから。
六平 赤の父親ば打開けて言へばよかろに。
トヨ ……婆と私の二人で、いぐら芝あ担いでも、おかいこ飼つても、口過ぎ出来なかつたです。そんで……。(短い間)
六平 一体が、その男にしてからが、悪気が有る訳でも無かろよ。又、心当りに
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