トウトしたりする権利は無い。灰になるまで、後継者からスネをかじられることをカクゴしてもらわなければならぬ。
私も、ひとかじりずつ、かじって見る。
まず広津和郎。なんというすぐれた神経組織だろう。それがクタクタに疲れている。そして、疲れたために強ジンになった。皮がナメされて強ジンになるように。これは単に「頭が良い」などという程度のことでは無い。頭の良さならタカが知れている。しかし神経の正常さと精密さにかけては、ザラにあるシロモノでは無い。それが、しかし、どうして、小説を書かせると、こんなにマズイのか? いや、マズイだけならよい。どうしてこんなに気のはいらない――むずかしく言えば彼自身にとって第一義的にはほとんど意味の無い小説を書くのだろう? いや、言いかたの順序が逆になった。広津の書く感想文、とくに人間についての印象記などは立派だ。このあいだ読んだ牧野信一との交友録など、目も筆も冴えかえったものであった。牧野信一を描いて、あれほど的確で深い文章を私は他に読んだことが無い。これはホンの一例で、広津の書くヒューマン・ドキュメントは、ことごとく一流のものだ。それが、おそろしくツマラヌ小説を
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