、そこに立ち得た彼等に、「意識化」が、その後、あまり起きていない。自分が立ち得た立場、自分が取り得た態度――即ち自我と自分の作品との関係の本質や、その自我を自我としてかくあらしめている社会(集団)との関係の本質――を客観的に理解し、つかみ取り、自分の中に定着するという事を彼等はほとんどしていない。つまり、自分が無我夢中のうちに確保し得た「陣地」が、自分にとって、又、他にとって、客観的にいかなる陣地であるかを知ろうとしていないのである。かえって、その中で眠りかけてしまっている。
 それでは、たとえ最初客観的にどんなに有利な地の理と条件をそなえていても、だんだんダメになって行く以外に無い。絶えざる意識化や、自己への定着が起きないところには、衰弱や腐敗その他のマイナスが起きないわけには行かない。そして、既にそれが起きている。

          4

 げんに戦後派作家たちのその後の作品が、ほとんど例外なしにすべて良くない。すくなくとも、彼等のそれぞれの第一作からわれわれが期待したものからは、いちじるしい距離がある。「技法」はみがきあげられた。「構築」もととのった。しかし技法や構築などより
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