ざるを得ない。これも理屈では無い。作家と作家活動の作用《ファンクション》が自然にそうなのだ。したがって作家が自然に為し、かつ、為さなければならぬ自我の追求、確立ということは、自分の内部において外部の世界を処理する仕事である。言葉を換えて言えば、自己の土台の上に社会的な連帯性を産み出すことであろう。つまり、作家は本来的に自発的に自分の属している人間集団全体の運命に自分の考えと仕事をつなげて行くものだし、行かざるを得ない。
 そして、われわれを最も強くゆり動かした最近の「社会的」な事件は戦争であった。あの戦争を、なにかの形でか自分の内部で処理する仕事は、実は作家の自我の確立の仕事の中での一番大きな課題なのである。
 そして、これらの作者たちの、ほとんど全部が、あの戦争を通過して来ている。なかには、かなりハデな形で通過して来ている人もある。それを、現在彼等は頬かむりをして過ぎようとしている。又は「悪い夢を見た」といったふうに、又「軍部に強制されやして」といったふうにソラトボケて見せたりしている。――つまり、自我を「眠らして」やり過そうとしているのだ。作家ならば、到底出来ない、又はしてはならな
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