え、彼はかえって弱くなってしまったように見えます。いや、単に弱くなっただけでなく、一種の腰抜けになったように見えるのです。自分が最善をつくして創りあげた物を、それから三、四カ月が経ったばかりなのに、それほど根本的に否定しなければならぬと言うのは、どういう事でしょう? 彼は作品を書く時に「あり得る」あらゆる事を考えたり見きわめたりしなかったでしょうか? どんな偉い人にもある、またどんなに注意しても避けることのできないところの盲点ということを計算に入れても、盲点による見落しは大体において部分的または第二次的なものであるのが普通であって、それほど根本的徹底的な否定を引きおこさなければならぬ理由になることは、ほとんどないのではないでしょうか? ですから、三、四カ月後になってそれほど根本的徹底的に否定しなければならぬような作品を、三、四カ月前になぜ書いたのか、どうして書けたのか、とも言えます。そんなものを書くのは、作家としてまちがいではないかという気がするのです。作家も社会的に存在しているのですから、社会的な責任は負わなければならないのですが、その責任をY君は自分勝手に逃げているようにも思われる
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