「だわね?
ロート そうさ、この世の中は元から気ちがい病院でね。ただ、幸福な気ちがいと不幸な気ちがいが居るだけだ。スーラだとかセザンヌだとかマネエだとかピッサロは幸福な気ちがい、なかんずく、われらが税関吏アンリ・ルッソウは幸福なる気ちがいの最たるものだ。そのほかは、みんな不幸なるおキチさんでね。なあエミール。
エミ 僕は、まだ気ちがいでもなければ不幸でもありません。これから、どっちかになるんですよ。
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飾窓を覗いていた若夫婦が少しオズオズしながら入って来て、売台のおかみに、飾窓を指して何か言う。おかみは飾窓の所へ行き、ガラス戸を開いて、フチに入ってない小さな絵を取り出して売台の所へもどって来て、客に見せ、双方で小声で何か掛け合っている。
[#ここで字下げ終わり]
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ベルト すると私などは、どっち?
ロート あなたは幸福なる――いや、あなただけは気ちがいじゃないね。まあ、気ちがい病院の看護婦と言う所かな。
ベルト あら、どうして?
ロート あなたは、金持ちの銀行屋の御亭主を持ち、愛し愛され、そしてサロン風のアトリエに坐
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