ト2字下げ]
ヴィン ああ、シイヌ、お前――(相手が足元もきまらぬ程に酔っているのを見てドッキリ言葉を切る)
シィヌ ――Sur le pont d'Avignon……
ルノウ あら帰って来たね。どこへ行っていたんだよ?
シィヌ え?(薄暗い室に、外から、いきなり入って来たのと酔眼のため、眼を据えて、すかして見て)あらあ、ルノウの小母さん、こんな所に来てたの? なあんだあ!
ルノウ どうしたんだよ?
シィヌ ハハ、あんたん所へ行ったのよ私。留守だろ? だから、しかたがないから、キューペルの酒場に寄って、これ――(ヂンの瓶を示して)借りてね、フウ!
ルノウ キューペルで、よく貸してくれたねえ?
シィヌ 小母さんちを訪ねて行って、またなにして稼ぐ気だって、あたいが言ったら、そんならまあ貸してやろうって――へへ!
ルノウ またなにするって、お前――(とヴィンセントの方を気にしてジロジロ見る。ヴィンセントは真青になって言葉もなくシィヌを見つめている)――なんせ、いい御きげんだね?
シィヌ 御きげんだわよう。ラララ、ラ、Sur le pont d'Avignon, L'on y passe, L'o
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