瘁B
ワイセ 帆立貝なども売ってるかね?
ルノウ 売りますね、注文さえ有れば。へへ。
ワイセ じゃ、こんだ注文に行くかな。(言いながら、おかみのふくらんだ尻をキュッとこすって、すまして出て行く)
ルノウ 助平爺いめ。……ねえ、さ、ゴッホさん! どうしてくれるんですかね? 今日は、あたしあ、払いをいただかなきゃ、テコでも帰りやしませんよ。
ヴィン ……(戸のわきにボンヤリ立っていたのが、ユックリこちらへ歩いて来ながら)すまない。ホントにすまない。なんとかすぐに――
ルノウ ただすまないで、すむと思うんですか? あたしんちだって、ああしてあんた、露店に毛の生えたような店なんですからね、こんなにカケを溜められたんじゃ立ち行かないんですからね。こちらのクリスチイネが頼むからまあ――クリスチイネとはズット以前からナジミですからね、食べるものがないと言って泣き付かれりゃ、うっちゃっても置けないしね、それに、近頃じゃ、あの子のおふくろまで時々やって来ちゃ、バタなんぞ持って行って、あんたんとこの帳面につけといてくれと言うんですよ。しかしそれも無理もないさ、クリスチイネの子供を四人もおっつけられて養って
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