烽ネくあれと正式に結婚しようと思っています。
モーヴ 結――? ……本気で君は、それを、言っているのか?
ヴィン 本気です。
ワイセ やれやれ。(両肩をすくめる)
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そこへゴトゴトと外からサボの音がして、ノックもしないで、ルノウのおかみさんが入って来る。身なりはひどく汚いが、まだどこか綺麗な四十前後の女。
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ルノウ (入って来てキョロキョロ室内を見まわし、モーヴやワイセンブルーフを認めるが、挨拶もしないでヴィンセントに向って、いきなり、まくし立てる)ああ、やっと居たねゴッホさん? やれやれ、私は昨日も一昨日も来たのに、絵を描きに写生に行ってるとかって、たんびに無駄足ばかりさせられて、ホントにまあ、絵だか屁だか知らんけど、しとを茶にするのもいいかげんにして下さいよ。やれ、どっこいしょと。(と勝手に椅子に掛ける)
ヴィン ああ、ルノウのおかみさん。
ルノウ ルノウのおかみさんじゃ、ありませんよ! あんた一体、内の借金をどうしてくれる気ですよ? こうして、ツケを持って来たがね、ごらんなさいよ、ミル
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