fミックな絵は描いていない。むしろ反対だ。しかしだな、アカデミスムを、君のような意味で否定していいものかね? ……それを君は考えて見ようとはしない。そしては、こうして、意地になって、あんな女と、くだらない遊びにふけっている。その点を――
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そこへ、なにも知らないシィヌが、大急ぎで仕度をしたと見え、来客たちに茶を入れて出すための道具をのせた盆を持って、隣室から戸口に現われるが、話が自分のことなので、立ちどまってしまう。モーヴもヴィンセントもそれに気づかぬ。ワイセンブルーフは無心に絵を見ている。
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ヴィン 遊びにふけったりしてやしませんよ。シィヌを描いていたんです。第一、あなたはすぐにあんな女と言うけど、あれのどこがどうだと言うんです? 女が絵のモデルになるのが、いけないんですか?
モーヴ すぐそれだ。まあ聞きたまい。モデルモデルと言うけどね、なるほど時にはモデルもするにゃするけれど、実は――この、ハアグ中の絵かきが、あの女のことを何と言っているか、君は知っているのか?
ヴィン し、知りません。
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