アとがあっても――
シィヌ だってさ、あたしなんぞ、いっそ、その方が良いかも知れないんだ。小さい時から、腹一杯食べたこともない、大きくなると皿洗いや洗濯で骨がメリメリ言うほど働きづめ、そいからモデルになったり、ルノウの小母さんに引きまわしてもらったりしている内に五人も子供が生れちゃってさ。それも一人一人父親が誰だか、わかりもしない。……(自分で自分の話に悲しくなって涙を流しながら)せめて、今度の子が、あんたの子だったら、私、よかったと思うけど。
ヴィン いいよ、いいよ、そんなこと、気にしないで良い。生れて来たら、僕は自分のホントの子として育てて行くよ。心配しないでいい、大丈夫だ、ね、シィヌ! (抱きしめて、頬に激しくキスする)僕は君が好きなんだ!
シィヌ ううん。(おとなしく、されるままになりながら)ちがう。あんたはホントは私が好きじゃないのよ。あんたは、やっぱり、その、よそへお嫁に行っちまったケイさんとか言うイトコの人に惚れてんだわ。
ヴィン ケイのことは言わないでくれ。
シィヌ そらごらんなさい。そうなのよ。
ヴィン そんなことはないといったら。その証拠にこうして君と一緒になって暮
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