Jドミュームの混った白で……そいからオリーヴ、ここにオークル。そうさ、着物はブルウ・ブルッスであったり、赤やこげ茶もあるが……遠くから見ると黒く見える。ボリナーヂュでも黒かった。……黒の中にはすべての色が在る。
シィヌ あたしの黒のブラウズねえ、今のはもう痛んじゃってるから、入院するまでに新しいのを一枚こさえてくれない?
ヴィン うん。……こさえては、いけない。(返事ではない)見える通りに、描くんだ。……天使を見たこともないのに、天使を描けるものか。……(夢中で描き進む)
シィヌ (そういうことには馴れているので、勝手にしゃべる)だって、あたし、今度のお産では、もしかすると死ぬような気がするの。さんざん無理をした身体ですもん。病院の先生も、今度はちょっとむずかしいかも知れないって。
ヴィン え、死ぬ?(ヒョイと呼びさまされて)誰が――?
シィヌ ですからさ、ブラウズだけでも新しくなにしたいのよ。せめて死ぬ時ぐらい身ぎれいにしていたいじゃないの?
ヴィン いや、そんな君、そんな、シィヌ――どうしてそんなこと考えるんだ?(シイヌの所へ行き、肩をつかむ)――僕と言うものが居る。たとえ、どんな
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