か言ってやりゃいいのに。(ゴッホに対する自分の態度が全く矛盾していることに気づかない)
ヴェルネ さて、そうすると、会社では、そこまでハッキリして来ているとすると、もうこれ、ストライキをやめて、すぐに入坑するほかに方法は無いようだな。
デニス とっつあん、そいつは駄目だ。それが出来るくらいならお前、こんな所まで(言っている内に、筋道の通らぬことを言っていることに気づいて、プツンと言葉を切る)
ヴェルネ ふむ。……ええと……(考えている。目が自然にヴィンセントを見ている。デニスも無言でヴィンセントを見つめる。老婆も目をやっている。それらの視線の中でヴィンセントはガクリと、うつ向いている)
ヴェルネ しかたがない、五百人からの人間が死んでしまうわけにも行かねえ。デニス、行こう。事務所へ行って、みんなに俺から話す。……(ゴッホに)先生、あんたのことは、わしら、忘れねえ。皆になりかわって――ありがとうがした。でも、こうなって、まあ仕方ねえから――(心からの頭を下げてから、戸口から出て行く)
デニス ……(これも続いて行きかけ、ゴッホに向って何か言おうとして、口を開いて言いかけるが、遂に一言も言
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