Bヴィンセントの方はカーッと発揚してイライラと白熱して来る酒で、ゴーガンのはドロンと底に沈んで行って、どこか少し凄味のある酒だ)
ヴィン だから俺は、君を画家としてはホントに尊敬しているけど、でも、奥さんや子供さんまで有るチャンとした家庭を、まるで古靴を捨てるようにして捨ててしまって顧みない君の気持が、俺にはわからない。
ゴー ハッハ、そいつは俺にもわからないさ。ただ、ある朝ヒョッと、人間はいつまでも生きてるもんじゃないと思った。俺も、だから、自分のホントにしたいと思うことをしなくちゃならんと思ったんだ。それまで十五年間俺は証券屋をやって、妻子を養って来た。今後もなんとか困らないだけの金は稼いでやった。だから後は、自分たちで何とかするがいい。これから先の俺の月日は俺のものだ。自分だけのために使うんだ。だから絵を描くんだ。あとはどうでも良い。俺の知ったことじゃない。そう思って、そうしたまでさ。ハハ!
ヴィン そうら、そう言って君は笑う! そんな風にだね。自分の親しい者をギセイにする資格が人間にあるのかね! しかも君は笑っている! 君の奥さんと子供さんは君から捨てられて、今ごろは泣いている
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