あ待て。(ハンナに)そいで、ほかの連中はどうしている?
ハンナ うん、ほかの家じゃ、山へ草の根掘りに出かけたり――そうだわ、十人ばかり、坑口の炭車の所にかたまって、モータアなんか叩きこわしてしまえだって――
ヴェルネ え?(立ちあがっている)モータアを叩きこわす?
アンリ (これもギクンとして立ちあがっている)いけねえ! そいつは、いけねえ!
デニス やれやれ! 叩きこわしてしまえ! こんな腐れ炭坑なんぞなくなっちまっても、かまやしねえんだ!
アンリ デニス、何を言うんだ、きさま! 俺たちはここの炭坑といっしょに永年生きて来てるんだぞ。炭坑がつぶれて、どうして俺たちあやって行ける?
デニス へっへへ、いいじゃねえかよ! 炭坑が在ったって俺たちは生きては行けねえんだ。同じことだ。そうじゃねえか? どっちに転んだって、俺たちあ、神さまに見放された人間だい。
ヴェルネ まあ待て。こいつは何とかしなきゃ、ならねえ。……アンリ、お前、すまんけどな、すぐに坑口の炭車の所に居る連中の所へ走って行ってくれ。俺もすぐ行くから、それまで、無茶なことはさせねえようにお前からそう言って。
アンリ よし、大丈夫
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