だ。
ヴェルネ そいから、ハンナ、お前な、おっ母あにそう言って、事務所の前に居る連中の所にすぐ行くようにってな。とにかく、俺がここの先生の返事を待って、すぐに行くから、それまでフランシスに、そのままで待っていてくれって、そう言うようにな。わかったか?
ハンナ わかった。お母さんにそう言うだね?
ヴェルネ そうだ。走って行くんだ。(ハンナとアンリが小走りに扉から出て行く)
デニス いいじゃねえか、ヴェルネのとっつあん。なるようにしかならねえよ。第一、モータア叩きこわすだなんて騒いでいても、どうせそんなこと出来るもんか。そんだけの元気がありゃ、とうの昔にストライキだって何とかなっているんだ。ウジ虫だ。ウジ虫が、コエつぼの中でただウジャウジャと騒いでいるだけだ。
ヨング ふむ。あんたは、この、ずいぶん勇敢なことおっしゃるが、ふむ――無神論者ですかな?
デニス ……あっしゃ、炭坑夫でさ。
ヨング ゴッホ君の説教は聞いておいでだろうね?
デニス 一度聞いたきりで、それから聞きませんねえ。
ヨング ふむ。……つまり、なにかな、あんたは、神さまは居られないと思っている――?
デニス よくわかりません
前へ 次へ
全190ページ中18ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング