めに、こちらの先生に御祈祷をあげてもらうために――
ヨング よろしいよろしい。私も待っていましょう。ふむ。(その癖のふむという鼻声が、相手を全く無視して、取りつく島がない)

[#ここから4字下げ]
間。老婆が口の中でブツブツと祈っている声。
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
ヴェルネ (マジリマジリしていたが、やがて娘に)ハンナ、そいで、なにかな、長屋のみんなは、どうしている?
ハンナ うん。四十人ばかり、小父さんやおかみさんが、かたまってね、事務所の前に居る。日給は今まで通りでいいから、入坑させてくれって、そう言って。フランシスの小父さんが、みんなを代表して事務所に頼んでいるんだって。
ヴェルネ そうか。フランシスがか?
アンリ そいつは、まずい! まずいぞ、そいつはフランシス! 俺たちが行くまで、どうして待ってくれねえんだ。そんなことすりゃ、会社の奴あこっちの腹あ見すかしてしまって、出来る話が出来なくならあ! なんとかしねえじゃ、そいつは、まずいぞ!
デニス 見ろ、鼻の先から、そう言う奴らが居るんだ。フランシスの裏切野郎!
ヴェルネ まあま
前へ 次へ
全190ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング