来たの。あの、ブリュッセルから、おいでになって、ここの先生に会いたいからって。おっ母さんが、ご案内しろと言うから――
ヴェルネ そうか。……(ヨングに)そいつはどうも失礼いたしました。そうでございますか。そりゃまあ、遠い所を。まあま、おかけんなって。どうぞ。(と椅子をすすめる)
ヨング ……(僧服のすそをめくって、椅子にかけ)ベルギイ福音伝道教会ブリュッセル委員会から参った者です。ふむ。
ヴェルネ そりゃまあ、ようこそ――この、なんでやす、わしら、こちらの先生からいろいろお世話になっております坑夫でございまして――わしはヴェルネと申しまして、こっちに居ますのは――
ヨング ああ、よろしいよろしい、かまわないで下さい。ふむ。(と全く相手にしない)ここが、たしかにヴィンセント・ヴァン・ゴッホの住いだな?
ヴェルネ はいさようで。ここでございます。ええと、今日は、なんでございます、先生はチョットこの、よそに――チョット出かけていられまして――わしらも、こうして待たしてもらっているようなわけで――(ヨングの眼がジロリと老婆の方へ行くのを追いかけて)これはバコウと言いまして、亡くなったせがれのた
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