らあ、俺あな、あんなインチキ坊主なんぞ――
アンリ ち!(デニスのえりがみをガッと掴む)
ヴェルネ おいおい!(立って行き、二人の間に割って入ってとめながら)いいかげんにしねえか! この大事な時に組合の代表のお前たちが、そんなことでどうなるんだ? いいから、やめろ!
アンリ 言わして置きや、ワッパのくせに、あんまり利いたふうな――
ヴェルネ まあさ! いいんだ、いいんだってアンリ!(そこへ入口の扉が外から開いて、ヴェルネの娘のハンナ「十四、五歳」と牧師ヨングが現われる)
ハンナ あら。(びっくりして口の中で言って)……おとっつあん!
ヴェルネ ……(そちらを見る。つかみ合いになりそうだったアンリとデニスも突っ立ったまま、入って来た二人を見る)どうしたんだハンナ?
ハンナ あのこちらの、あの――(とヨングを顧みる。ヨングは肥満した身体に、白い襟に黒の僧服をつけ、自足した落ちついた態度で、室内を見まわしている。三人の男が喧嘩でもしていたらしいことをすぐに見て取ったのだが、それに対して軽蔑の表情も現わさないほどに冷静である)
ヴェルネ ええと――(二、三歩出てくる)
ハンナ あたし、案内して
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