生きてりゃ、いつかは神の祝福がある。へっ! だから、爆発で人がこんだけ死んでも、ただ祈ってろ。慰藉料を会社が三十フランずつしきゃ出さなくても、がまんしてろ。日給二フランと五十サンチームを三フランに値上げすることなんぞ要求するな。あべこべに二フランに値下げしようと言う今度の会社のやり方にも、御無理ごもっともで黙って働け!
アンリ ちがうぞ。ちがわあ! 今度の値下げについて黙っていろなんぞと、ここの先生は言ってねえ。三フランなきゃ暮しは立たねえとハッキリ言ってたぞ。今日もそのことを掛け合って来るんだって出かけたんじゃねえか。
デニス へへ、今に見な、チャーンとお前、バリンゲルにやりこめられて戻って来るよ。そして、会社の言うなりに、ストライキやめて働きなさいと説教するよ、きまってら。坊主なんてものは、どんな立派な坊主でも一人残らず、会社だとか金持の奴らの手先になって、俺たちをトコトンまでしぼり上げるための道具だい!
アンリ デニス、大概にしねえか!(今度は本気に怒って腰かけから立ちあがって、デニスの方へ詰め寄る)いつまでも先生のことをそんなふうに言やあがると――
デニス いくらだって言ってや
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