ョかされ過ぎて、自分を失い、乱れ疲れてばかり居たのだ。それがわかった。もう俺はどんなことがあっても自分を取り失いはしないだろう。テオよ、とは言っても俺はゴーマンにはなっていない。俺にはまだ傑作は描けない。俺の技術はまだギクシャクして完全ではない。しかし独創的な――他人からの借り物でない――これこそヴィンセント・ヴァン・ゴッホであり、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ以外のものではない線が描けるようになった。これもお前のおかげだ。お前は俺を愛してくれ、尊敬してくれ、俺が絵を描きはじめて以来、一月もかかさずに、自分の働いて得た金の中から、俺の生活費と絵の材料の費用を送ってくれる。何と言うお前は良い弟か。そのお前の愛情と尊敬とギセイに、いくらかふさわしい画家に、やっと俺はなりかけている。俺がもし立派な絵を描くことが出来れば、その作品は文字通りお前との合作だ。わかるかいテオ? 俺はお前にこう言えることが、こう言えるようになったことが、うれしく、誇らしくてならないのだよ。俺はボリナーヂュで神を見失った。その後ハーグでもヌエネンでもアムステルダムでもパリでも、神は俺には見つからず、現在でもキリストの神が
前へ
次へ
全190ページ中132ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング