X子をかぶった洗濯女の一群がいる。女たちの笑いさざめく声が川面にひろがり、橋を渡る馬車のわだちの音がガラガラと鳴り、それらが響きかわして、絵を描いている俺の所までとどいて来た。あの馬車には、アルルに来てから俺の知り合いになった百姓が乗っているかも知れない。洗濯女の中には、善良な郵便配達ルーランのおかみさんが、まじっているようだ。……俺は筆を使いながら、遅まきながら画家になった自分をシミジミと幸福だと思った。俺はホントに幸福だ。……俺はまた、もう一枚田舎の小さい橋と、もっと大勢の洗濯女との風景を描いた。駅のそばのプラターヌの並木道も描いた。仕事のための着想は群がるように湧いて来る。だから孤独ではあってもそれを感じている暇もない。俺は蒸気機関車のように描きつづけている。グイグイと仕事が進む。一日に一枚ずつ時によると二枚も仕上げることがある。俺はまるで自分が日本に居るような気がする。俺はここに来てはじめて、自分を発見した。完全に独創的な画家として自分を打ち立てた。形も色も恐ろしい程にハッキリ見え、見たものを少しの疑いもなくカンバスに描ける。パリでは、いろいろの刺戟が強過ぎたし、他からの影響に
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