≠ュここへ来るようにと、いくら俺が手紙を出しても、まだやって来ないのは、なんと残念なことだろう! ここへ来ればゴーガンは丈夫になる。一緒に安あがりに暮せる。ゴーガンも俺もドンドン絵が描ける。それが売れる。すればテオよ、お前にかける厄介も少しずつ軽くなる。早く来るように、お前からもゴーガンにすすめてくれ。
[#ここで字下げ終わり]
「二本の李の樹」
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
ヴィンセントの声 (すこし早口で)テオよ、こちらでは、毎日良い日が続く。と言っても天気のことではない。天気は、アルルでは風のない静かな一日に対して風の日が三日つづく。この風を土地の人はミストラルと言う。恐ろしくイライラと神経をかき立てる風だ。だが、花の咲きそろった果樹園は早く描かないと、待ってくれない。だから俺は地面にくいを差して、それにイーゼルを縛りつけて、風の中でも仕事をしている。俺はドンドン、ドンドン描いて行く。ライラック色の耕地、赤い色の葦の垣根、かがやかしい青と白の空に伸びている二本のローズ色の李の樹。これは恐らく、俺の描いた一番良い風景だ(言葉の調子がシンミリと沈んで来る)……
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