ネい。僕はそう思うんだ。世の中が、たとえどう変ったって、平民が、つまり貧しく働いている人間が幸福にならなきゃならんと言うことは、いつでも、どこでも真理だと言うことだ。僕も貧乏だ。そして貧乏な人間を絵に描く。僕は金持とは縁がない。貧乏人が一人でも食う物がなくて泣いている時に、僕だけが天使の絵なぞ描いて自分だけで良い気持に幸福になってはいられない。(先程の陰鬱な、状態から、いつの間にか再び昂奮状態に入っている。その変化の波の激しさ)
タン そうですとも! 全くです! 今の世の中で、一日五十サンチーム以上で暮している奴は、みんな悪党ですよ!
ヴィン それでペール・タンギイだ。よし、描くぞ。(低い鼻歌で「マルセーズ」のメロディを口ずさみながら、カンパスに向う。モデルに坐っているタンギイも、それに和する)……アルモニイ。統一。……トーンがない? ……そうか。畜生! ……(無意識に独語しながら、眼をギラギラ光らせて、モデルを見ている。モデルは動かないで「マルセーズ」を低くハミングしている)ねえ小父さん、その壁の、こっちのは、ウタマロだったね?
タン そうですよ、こっちがウタマロ。ウタマロ。そして、
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