ネっているからだよ。(ヴィンセント、ギクンとして、石になったように「タンギイ像」を凝視する。その間に、ゴーガンは、その絵を先程テオに向って褒めたのと今の批評の言葉が矛盾していることに自ら気がついているのかつかないのか平然として、タンギイに)……タンギイ小父さん、十フランだけ貸してくれないかね。昨日の朝から何も食っていない。すこし腹がへった。
タン ……でも、この前にお貸ししたのが、まだ――
ゴー グーピルでテオドール君が一枚売ってくれそうなんだ。売れたら、一度に返す。(彼の言い方には妙に圧力がある。タンギイは、それに押されて、しぶしぶしながら、ポケットの財布から金を出して、ゴーガンに渡す。……ゴーガンは別に礼も言わず、それをポケットにほうり込んで、出て行きかける。他の四人は入口の所で待っている)
ヴィン ……(絵の凝視から不意に醒めて、あわててゴーガンの前に廻って)ま、待ってくれ。僕の言っているのはね、いや、いや、この絵はそうかも知れない、メチャメチャかも知れない。トーンがないのは、君の言う通りかも知れない。そのことじゃないんだ。僕の言いたいのは、それじゃないんだよ。わかってくれ、ゴー
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