lのパレットの上はスッカリ変ってしまった。明るくなった僕の絵は。ね、そうだろ? そうは思わないかねトゥールズ?
ロート そうだ、そうだ。しかし、もうその話はいいじゃないか。(立つ)
ヴィン そうだねエミール?
エミ そうですよ、たしかに。
ベル さあ、もうタンブランの方へ行かないと、おそくなってしまいますわ。(立つ)シニャックさんも御一緒にいらっしゃいません?
シニ 展覧会ですか、ええお供しましょう。
ヴィン (あわてて)ま、待って下さい待って下さい。ねゴーガン! ところが僕は近頃、気がついたんだ。先刻シニャックにも話したんだが、色彩は大事だ。しかし一番大事なものは色彩じゃない、やっぱりデッサンだ。いや、デッサンと言うと、やっぱり違う。技法としてのデッサンではない。実体のことだ。描こうとする物の、当の実在のことだ。リアリティのことだ。そこに物が在ると言うことなんだ。セザンヌのリアリザシォンのことじゃない。あれは表現上の方法のことだ。僕の言うのは物自体のことなんだ。これを掴まえることが画家の一番大事なことだと言うことに気がついたんだ。もちろん色彩は大事だよ。しかし、色彩だけでは片付かない
前へ
次へ
全190ページ中113ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング